日本でのテーラワーダ式葬儀の一例(真宗式をヒントに)


*読む経典は? 

 本願寺派(西本願寺)では葬儀用に組み立てた経本を売っている。在家信者の日常読誦用もある。他宗派もあるかも。 

テーラワーダ協会の『日常読誦経典』は、そのまま各種の法要に使えるように組み立てられている。ただし品切れ? 

サンガ版のスマナサーラ長老のCD付きの『ブッダの日常読誦経典』が完璧。読誦に自信がなければ、添付のCDをかけてそれに合わせて唱えるとよい。


*葬儀を行う意義は? 

 各宗派共通(テーラワーダも)の葬儀の意義について、藤本晃『お葬式の才覚』を参照。『お布施ってなに?』『功徳はなぜ回向できるの?』等も参照して、万人共通の葬儀の意義を喪家や参列者に伝える感じで法話(お話・コミュニケーション)を組み立てると楽かも。 

いずれの機会にも法話は必要。短くて(五分くらいで)、一言でもよい。


*儀式の進行は? 

僧侶が出て読経する機会は約三回ある。 

1:枕経 

 葬儀社が準備をして、遺体の枕辺で五分~十分くらいの長さのお経(真宗では『東方偈』など)を唱える。テーラワーダなら『慈経』がよいかも。 

その後で法話: 

 悲しみに暮れつつ、同時に、これから葬儀に向かってなんだか途方もなく労力、気力を使いそうで、しかもしきたり・やり方は分からない、で、喪家は茫然?なので、葬儀までの流れの説明や、作法や儀礼よりも心が大事などと、気分だけでも気楽になるように持っていく。 

2:通夜のお経 

 十五分くらいの長さのお経(真宗では『阿弥陀経』『正信偈』など)を唱える。その間に参列者に焼香してもらう。テーラワーダなら『宝経』だけでは短いかも。『慈経』へとメドレーでちょうどよいかも。 

法話: 

夜をとおして故人の遺徳を讃えることを勧める。それだけでも善行為だから。同時に、私たちも気を引き締めて日々を生きよう、などとポジティブに。 

3:葬儀 

◎まず会場を落ち着かせる。葬儀の前からBGMみたいにしてテーラワーダのお経を流す。『十二因縁』や『二十八過去仏』はいかが? または、葬儀の最初に、テーラワーダなら『諸仏の教え』や『歓喜の言葉』などの短いお経を、ゆっくりと、読む。 

◎儀式の始めは、仏様をお招きすること。テーラワーダなら、『礼拝』『三帰依』『五戒』『ブッダの九徳』『法の六徳』『サンガの九徳』を連続して唱える? 

◎次に、真宗なら故人に仏弟子になってもらう(故人に目が向いている)。故人の代わりに『三帰依』『五戒』を唱え、仏さまの代わりに祝福『諸仏の教え』などを唱える。 

テーラワーダなら、故人も遺族も無常を観じる好機ということで、『無常偈』を、ゆっくり、三回繰り返して唱える。 

◎その後、新しい門出を「祝って」、読経と焼香。真宗なら『正信偈』の偈文だけ(十~十五分)。テーラワーダなら『宝経』か『慈経』か両方。参列者が少なければ『宝経』だけで充分。 

◎最後に遺族と参列者に向き直って法話。故人もとっくに新しい門出をし、新生活を始めている。こちらも日常生活をしっかり歩むことが大事。しかも、故人に何かしてあげたければ、言葉も物質も届かない人には功徳回向だけが効くので、そのためにこちらで善行為をしないといけない。今日の参列もじつは善行為。他者のため、自分の心の成長のため、何か善いことをしたらその功徳を故人や一切衆生に回向することも大事、などと。 

4:火葬場までついて行くなら 

◎最後の焼香の時に伴奏で読経。『慈経』など。それを「初七日」のお勤めにしてもよい。 

5:その後は? 

◎七日七日のお勤めがあるなら、『宝経』と法話。満中陰法要は法事なので仏さまを招いて(礼拝、三帰、五戒など)から、読経(宝経と慈経)と法話。その後も、盆や百か日などはお経と法話だけ。一周忌、三回忌などの法事は仏さまを招いてから。


*テーラワーダに関心ある日本の僧侶が導師をすると便利

「友人葬」「家族葬」として、葬儀社の手を借りながら自分たちでやってもOK。お手製で心温まる葬儀になる。葬儀社は一般的な「友人葬」なども手掛けているので、そこにテーラワーダ式のお経や理念をはめ込むだけでよい。 

*戒名なども必要なら手製し、念のため、理解ある僧侶に形や文字をチェックしてもらえばよい。書き方は葬儀社に聞く(書いてもらう)。ただし戒名をつけるなら、仏教徒たる証・三帰五戒は最低限必要と心得ておこなうべし。


未決・藤本晃2012.3.31